九里四里うまい
八王子の夜8時になると、歓楽街に軽トラの焼き芋屋が現れる。
寒い夜に「お姉さんへのお土産」で、買っていくおじさんをよく見かける。
この軽トラにはないが、「九里四里うまい十三里」と書いたものを見たことがある。
「栗よりうまい」のシャレだろう、と見当はつくが、いつ頃始まったキャッチコピーなのか。
江戸末期に宮川政運なる人が書いた「俗事百工起源」という本に、文化3、4年というから1806、7年ごろ、「看板に、八里半、と書いておおいに売った焼き芋屋があった」という。
八里半は九里に近い、だから「栗に近い味ですよ」ということだ。
江戸っ子はこういう言葉遊びが大好きで、なるほどこの店は流行っただろうと想像できる。
そこで一気に里程を増やして、十三里芋、と書いた看板が出現した。
「是れ八里半の上にて、栗より(九里四里)」うまし、と言えることになり、と著者は書いている。
その後、八里半の看板は絶えて無くなったそうだから、今も昔も広告というのは大げさになりがちなものらしい。
焼き芋のシーズンである。