胸と背中
タイトルからは何のことだか分からないだろう。
小生の93歳の母のことを書いたことがあるが、母を見ると思い出す話を書いておこうと思う。
誰でも生まれてすぐおっぱいを飲ませてもらい、抱かれて育った母の胸の暖かさと柔らかさが、小児体験として脳に刻まれている。
懐かしい感覚が残っているのだという。
一方、父親が子供にやったことは、せいぜい背中を見せることだ。
かって、農家に生まれた子は、黙って田を打つ父の背中を見て、農作業を覚えた。
大工の息子も、漁師の子も、父親の背中を見て育った。
それぞれが、後ろに回って背中の方から体や手の動きを見ていなさい、と言われたものだ。
それぞれの背中に存在感があった。
それが、父親の密かな誇りであったのだけど、やっぱり母親にはかなわない。
胸に抱くのは、最高の愛情表現なのだから。